標高2400メートル〜 神の鳥 ニホンライチョウ

日本雷鳥

日本の高山で2万年を生きたニホンライチョウ。ライチョウが日本にやって来たのはおよそ2万年前の氷河期で、樺太、カムチャッカ半島を経由し本州中央部の高山帯に定住したが、氷河期が終わり温暖になったことで大半のライチョウは寒い北へ戻ったが、ごく一部が日本の高山に残った。世界的に見ると日本の生息地が、ライチョウの南限になる。



ほぼ年間を通して高山帯に棲み、高山植物を餌とする。寒帯にあたる高山のきびしい気候に適応し、冬は白、春には白・黒・茶の斑、秋にはくすんだ秋羽にと、年に 3 回換羽することで年間を通し保護色を保つ。



人を恐れない日本のライチョウ

日本の山岳信仰では高い山には神が宿るとされています。里は人間の領域、奥山は神の領域とされ、最も山の奥にいるライチョウは神の鳥として崇められてきました。昔からニホンライチョウは人に危害を加えられることなく生きてきたので人を危険だと思っていません。


全体の個体数

1984年以前は約3000羽と推定されていたが,最近の調査では2000羽以下(2018年は1600~1700羽)にまで減少している。減少要因として、キツネやカラスなどの生息域拡大による捕食の増加,山岳環境の汚染、開発による生息地の減少、ニホンジカの侵入による高山植生の破壊などが挙げられる。


絶滅危惧種/特別天然記念物

2012年、環境省レッドリストにおいてニホンライチョウは絶滅危惧ⅠB 類にカテゴリーが引き上げられ、環境省を中心に「ライチョウ保護増殖事業計画」も開始された。ニホンライチョウは今まさに絶滅かどうかの瀬戸際にある。現在、生息域内の高山帯と生息域外の動物園において、様々な調査研究や保全活動が行われている。


具体的な保護プロジェクト

ライチョウの雛は生後一ヶ月までの死亡率が非常に高い。原因は捕食される、梅雨の時期に孵化するので悪天候による低体温死や採餌ができず餓死など。


生息域内での保護活動

生息地を国立公園や鳥獣保護区に指定する

ケージ保護(乗鞍岳での実験を経て南アルプスの北岳で実施。保護メンバーが常にライチョウに寄り添い保護し、夜はケージに入れる)

天敵の駆除(今までは高山に生息しなかった猿やキツネ、カラス、オコジョ、テンなどの駆除)

生息環境の保護(鹿や猪、熊などの高山進出で生息地が荒らされてしまう)


生息域外での保護活動

2015年より動物園(富山市ファミリーパークや恩賜上野動物園など)では、まずは比較的生息数が安定している地域から採卵し「人工飼育」を開始。これは今のうちからライチョウの人工繁殖や飼育技術を確立しておく必要性があるためである。



ライチョウの生息地

江戸時代以前の文献では蓼科山、八ヶ岳、白山にライチョウが生息していたと記録されているが、現在は生息していない。岐阜・石川県境に位置する白山は大正初期を最後に確認が途絶え、絶滅したとされた。しかし70年後の2009年6月2日に石川県白山自然保護センターが雌1羽を確認し、3年間生存を確認している。このライチョウは石川県立大学によるDNAの解析などで飛騨山脈方面から飛来したものと推定されている。

中央アルプス(木曽駒ケ岳)にもライチョウは生息していたが、1967年(昭和42年)7月の駒ヶ岳ロープウェイの開通後数年で絶滅した。

しかし、1969年を最後に目撃がなかった木曽駒ケ岳(木曽山脈)のライチョウだが、2018年、登山者によりライチョウが確認、撮影された。この個体は羽毛の遺伝子解析から乗鞍岳など北アルプスから飛来したメスと推測。

2019年に環境省は、このメスの個体に同じ北アルプスの個体から採取した有精卵を抱かせて孵化や天敵(キツネ、カラスなど)の生息状況調査を実施している。同2019年6月、北アルプスの乗鞍岳の巣で一部採取した有精卵と、木曽駒ケ岳の巣の無精卵を入れ替えてこの雌に抱かせた。結果は入れ替えた有精卵6個のうち、5個が孵化。7月1日の調査では巣の約30メートル先で5羽のヒナと雌の姿が確認された。しかし、その後7月11日の調査では、この5羽のヒナたちの姿は発見できず、同省信越自然環境事務所(長野市)の担当者は「残念ながらひなは全て死んだとみられる」との見解を示した。

世界を変える美しい命をつなぐプロジェクト

人間の手によって絶滅の危機に追いやられた生き物たちの命を次の世代へとつなぐプロジェクト

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